「区長!」

「・・・なんだい?秘書くん…。」

その日の彼女は、やけに怒っているようだった。



帽子を見せて下さい。



「秘書くぅ〜ん?怒ってるとその綺麗な顔が台無しだよぉ〜…ってちょっうわっ!!」

「良いですからちょっとこちらへ来て下さい。」

「何なの秘書くん?!私は仮にもこのブロックのくちょ「そんな事は解っています。今すぐこちらへ来て下さい。」



…秘書くんはそう言って、私の首根っこを掴んで引きずって行った…。

…何処へって?…そんなの秘書くんに聞いてよぉ〜(泣



「帽子を見せて下さい。」

「・・・は?」

たどり着いたのは普段、あまり人が入らない様な部屋。ちょっと小汚いし埃っぽい部屋だけど、見渡す限り一通りの物は揃ってるみたい。

なんか、裁縫道具関係が異様に多い様な気がするけど…気の所為、かな?(汗

「ですから、区長が頭に被っていらっしゃる、その帽子を私に見せて下さいと言っているんです。」

「いや、それは流石の私でも解るよ?でも…」

なんで、と言おうとした刹那、自分の頭の上には、もう帽子は無かった。

「秘書くん!!「メガネ預けますので暫くお待ち下さい。」はい。

…我ながら単純だとは思っている…。(泣




「・・・で?その帽子がどうかしたのかい?」

「〜っ、あのですね。この帽子が、どれだけ汚れたりほつれていたりしているのか、御自分で解っていらっしゃってますか?!ほら、ここですとか。」

「あ〜・・・・・(汗)ホントだ・・・。」

「これじゃあ、帽子が可哀想です。いつも見ててそう思っていました。今日は丁度公務もお休みの日ですので、今ここで直してしまおうと思いまして、ここにお連れしたんです。

・・・手荒なマネをしてしまって、済みませんでした…。」

語尾が消えかかっている。

見てると秘書くんは、さっきの怒りは何処へやら。とてもすまなさそうな顔をしている。そこまで言うのなら何もやらなければ良かった話なんじゃあ無いのかなぁ…。とも思うんだけど、

今回はあまりにも秘書くんが可哀想で、可愛くて(ぇ。

「良いんだよ、秘書くん。それで。」

「・・・え?」

「帽子の事を解ってやれなかった、私も悪いしね…。

どうだい秘書くん。今回はお互い様って事で?」

そう言って、グッと親指を秘書くんに向かって立ててみた。

秘書くんはそれを見て、プッと笑って。それから、

「・・・はい、そうしましょう。」

と、満面の笑顔を私にくれた。



−それで良いんだよ…秘書くん…−

 −私は君の、その笑顔が見たいから…−



しょげてる所も、可愛いけどね。